見聞きする人が思わずまゆをひそめてしまう様子を楽しむかのように,わざと思いっきり奇天烈な格好とか言動をとる人はいつの世にもいるものです。
<腰パン君>といって,ズボンを激しく下にずらして足が極端に短く見えるようにしたり,女子であれば<顔黒(ガングロ)>にしたり,風呂に入らず服も着替えず不潔こそベストと信奉する<汚ギャル>一味など。
普通の姿はそこそこ標準以上なのに,カッコ良さを追及せず,当然のひんしゅくをかうスタイルを好むあたりは,その年頃に特有な反抗や露悪趣味の発露なのかも。ただ,さすがに腰パンもガングロも汚ギャルも,流行ったのはごく短い間,いつのまにか消滅してしまいました。
セロニアス・モンクという一時代を築いたレジェンドのピアノを聴くたび,わざとカッコ悪く見せる腰パン君を思い出してしまうのです。
ここはこう来るだろうと思っていても思わせぶりに間をおいたり,ここは少し沈黙する所だろうとの期待に反して突然饒舌になったり,期待をサラリと裏切るところが面白く,そして飽きない。
変人のあだ名をちょうだいしましたが,ユーチューブに上がったライブを見ていると,自分のソロパートが終わると,やおら立ち上がり,次のソロを受け持つ,テナー奏者やベーシスト,ドラマーの演奏をじっと動かずに観察する姿は,異様というか不気味というか。引退前後に躁うつ病をやんでいたという噂もあったとか。
されど,ジャズプレイヤーとしては比較的長生きしたほうで,晩年は心優しい相方(配偶者)にも恵まれたようです。
私が好きな作品は,<ソロモンク>という,モンクのピアノソロだけで構成されたアルバムです。ラブソングを集めたものですが,全部がぜんぶ素晴らしい。モンクのオリジナル<ルビー・マイ・ディア(愛しのルビー)>は,誰を想って作ったものなのでしょうか?
◆ Thelonious Monk Ruby, My Dear https://www.youtube.com/watch?v=jymS_7zyy7c
2019.8.24 ひふみ